こどもの矯正、インビザラインファーストとは
お子さまの歯並びが気になっている保護者の方は多いのではないでしょうか。
「子供の歯並びが悪いけど、目立つ矯正装置は嫌がるかも...」
「矯正治療って痛そうだし、子供が嫌がらない方法はないのかな」
このような悩みをお持ちの方に朗報です。今回は、小児矯正の新たな選択肢として注目されている「インビザライン ファースト」について詳しくご紹介します。
透明なマウスピースで目立たず、痛みも少ない小児矯正の方法について、矯正専門医の立場から解説していきます。
- インビザライン ファーストとは?子供向け矯正の新たな選択肢
- インビザライン ファーストの5つの特徴と従来の矯正との違い
- インビザラインファーストで期待できる効果
- インビザラインファーストの注意点とデメリット
- 小児矯正のタイミングと治療の流れ
- まとめ:お子さまに最適な矯正治療を選ぶために
インビザライン ファーストとは?子供向け矯正の新たな選択肢
インビザライン ファーストは、お子さまの成長段階に合わせて開発された小児専用のマウスピース矯正システムです。
従来のワイヤー矯正とは異なり、透明なマウスピースを使用するため、見た目に目立ちにくいという大きな特徴があります。特に小学生のお子さまは、外見を気にする年頃になってきますので、目立たない矯正装置は大きなメリットといえるでしょう。
インビザライン ファーストは、2018年に日本で導入された比較的新しい矯正システムです。乳歯と永久歯が混在する混合歯列期(一般的に6〜10歳頃)のお子さまを対象としています。
この時期は顎の成長が活発で、歯並びを整えるのに最適なタイミングなのです。
インビザライン ファーストの対象年齢と適応条件
インビザライン ファーストの対象となるのは、主に6歳から12歳くらいのお子さまです。
ただし、年齢だけでなく、お口の中の状態によって適応条件があります。具体的には以下の条件を満たしていることが必要です:
- 第一大臼歯(6歳臼歯)が生えていること
- 前歯(切歯)4本のうち2本が2/3以上出ていること
-
3/4顎に乳歯(C・D・E)またはまだ生えていない永久歯(3・4・5)が2本以上あること
これらの条件をすべて満たしていることが、インビザライン ファーストを始めるための基本条件となります。
しかし、これらの条件を満たしていても、すべてのお子さまに適応できるわけではありません。歯並びの状態や顎の成長状況など、総合的に判断する必要があります。
インビザライン ファーストの5つの特徴と従来の矯正との違い
インビザライン ファーストには、従来の矯正装置と比較して多くの特徴があります。お子さまと保護者の方にとって嬉しいポイントをご紹介します。
1. 透明で目立たない装置
インビザラインファーストの最大の特徴は、透明なマウスピースを使用することです。
従来のワイヤー矯正では、金属のブラケットやワイヤーが目立ってしまいますが、インビザラインファーストは透明なので周囲からほとんど気づかれません。
お子さまが人前で笑うことを躊躇したり、からかわれたりする心配が少なくなります。特に思春期に差し掛かるお子さまにとって、見た目を気にせずに過ごせることは大きなメリットです。
2. 取り外し可能で衛生的
インビザラインファーストは自由に取り外しができるマウスピースです。食事や歯磨きの際に取り外すことができるため、従来の固定式矯正装置と比べて口腔内を清潔に保ちやすいという利点があります。
特に歯磨きが苦手なお子さまでも、いつも通りの歯磨きができるので、矯正治療中の虫歯リスクを低減できます。
また、食事の際にも制限がなく、好きなものを食べられるのもお子さまにとって大きなメリットです。
3. 痛みが少ない
インビザラインファーストは、一度に歯を大きく動かすのではなく、少しずつ段階的に動かしていきます。
マウスピースの交換期間が短く、一度に動かす距離が0.25mmと小さいため、従来の矯正装置と比べて痛みが少なく済みます。
また、マウスピースは滑らかなプラスチックでできているので、お口の中を傷つけることもなく、口内炎に悩まされる心配もありません。
お子さまが痛みを訴えて矯正治療を嫌がってしまうリスクが低減されるのは、保護者の方にとっても安心ポイントではないでしょうか。
4. 通院頻度が少ない
インビザラインファーストでの治療は、1〜3ヶ月に1回程度の通院で済みます。
従来のワイヤー矯正では月に1〜2回の通院が必要でしたが、インビザラインファーストではマウスピースの交換をご自宅で行うことができるため、通院の頻度を減らすことが可能です。
お子さまの習い事や学校行事、保護者の方の仕事の都合など、忙しいスケジュールの中でも矯正治療を無理なく続けられるのは大きなメリットといえるでしょう。
5. 成長に合わせた治療が可能
インビザラインファーストの大きな特徴として、お子さまの成長に合わせた治療が可能な点が挙げられます。
従来の矯正治療では、顎の大きさを広げてから歯並びを整えるという二段階のステップが必要でした。しかし、インビザラインファーストでは、顎の大きさを広げながら同時に歯並びを整えることができます。
これにより、治療期間の短縮が期待できるのです。また、歯の生え変わりに合わせて新しいマウスピースを作成できるため、乳歯と永久歯が混在する時期でも柔軟に対応できます。
お子さまの成長は一人ひとり異なります。インビザラインファーストは、そのお子さま固有の成長パターンに合わせてカスタマイズされた治療が可能なのです。
インビザラインファーストで期待できる効果
インビザラインファーストによる小児矯正では、様々な効果が期待できます。
お子さまの将来の歯並びや顎の成長に大きく影響する重要な治療です。
顎の成長をコントロール
小児矯正の大きな目的の一つは、顎の成長をコントロールすることです。
お子さまが成長期にある6〜12歳頃は、顎の骨も成長している時期です。この時期に適切な矯正治療を行うことで、顎の成長を誘導し、将来的な歯並びの問題を予防することができます。
インビザラインファーストは、顎の大きさを広げながら歯並びを整えることができるため、永久歯が生えるためのスペースを確保することができます。
これにより、将来的に歯が込み合うことを防ぎ、抜歯の必要性を減らすことができるのです。
様々な歯並びの問題に対応
インビザラインファーストは、以下のような様々な歯並びの問題に対応することができます:
- 出っ歯(上の前歯が前に出ている状態)
- 受け口(下の歯が上の歯より前に出ている状態)
- すきっ歯(歯と歯の間に隙間がある状態)
- 開咬(前歯が噛み合わない状態)
- 八重歯(歯が重なって生えている状態)
-
交叉咬合(上下の歯の噛み合わせが交差している状態)
これらの問題は、放置すると将来的に咀嚼や発音の問題、顎関節症などの機能的な問題を引き起こす可能性があります。
早期に適切な治療を行うことで、これらの問題を予防し、健康的な口腔環境を維持することができるのです。
第2期治療の期間短縮
小児矯正は一般的に2段階に分けて行われます。第1期治療は混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)に行い、第2期治療は永久歯が生え揃った後に行います。
インビザラインファーストによる第1期治療を適切に行うことで、第2期治療の期間を短縮できる可能性があります。
場合によっては、第1期治療だけで歯並びの問題が解決し、第2期治療が不要になることもあります。
ただし、これはケースバイケースであり、すべてのお子さまに当てはまるわけではありません。多くの場合、第2期治療も必要になることを念頭に置いておくことが大切です。
実際、小児矯正のみで歯並びが80点以上に改善するケースは全体の1/4程度と考えられています。
インビザラインファーストの注意点とデメリット
インビザラインファーストには多くのメリットがありますが、いくつかの注意点やデメリットも存在します。
治療を検討する際には、これらの点も十分に理解しておくことが大切です。
装着時間の管理
インビザラインファーストは、1日20時間以上の装着が必要です。
この装着時間を守れないと、治療効果が十分に得られず、治療期間が延びてしまう可能性があります。
小さなお子さまの場合、この装着時間を自己管理することが難しいこともあるでしょう。保護者の方のサポートが必要になります。
マウスピースの装着状況を確認し、適切に管理することが治療成功の鍵となります。
紛失や破損のリスク
取り外し可能なマウスピースは、紛失や破損のリスクがあります。
特に小学生のお子さまは、給食の時間などにマウスピースを外して置き忘れてしまったり、誤って捨ててしまったりすることもあるでしょう。
マウスピースを紛失した場合は、新たに作製する必要があり、その分の費用や時間がかかることになります。
マウスピースを保管するケースを用意し、外した際の置き場所を決めておくなどの対策が必要です。
すべての症例に適応するわけではない
インビザラインファーストは、すべての歯並びの問題に対応できるわけではありません。
複雑な症例や重度の不正咬合の場合は、従来のワイヤー矯正の方が適している場合もあります。
また、顎の成長に大きな問題がある場合など、インビザラインファーストだけでは対応できないケースもあります。
治療を始める前に、矯正専門医による詳細な診断と治療計画の立案が必要です。
お子さまの状態に最適な治療法を選択することが、良好な治療結果につながります。
費用面での考慮
インビザラインファーストは、従来のワイヤー矯正と比較して費用が高くなる傾向があります。
マウスピースをカスタムメイドで作製する必要があるため、その分のコストがかかるのです。
また、歯の生え変わりに合わせて新しいマウスピースを作製する必要があるため、追加費用が発生することもあります。
治療を始める前に、費用面についても十分に理解し、計画を立てておくことが大切です。
小児矯正のタイミングと治療の流れ
小児矯正を始めるタイミングは、お子さまの歯並びの状態によって異なります。一般的な治療の流れと、適切な治療開始時期について解説します。
第1期治療と第2期治療
小児矯正は、一般的に2段階に分けて行われます。
第1期治療は、乳歯と永久歯が混在する混合歯列期(6〜12歳頃)に行います。この時期の治療目的は、顎の成長をコントロールし、永久歯が生えるためのスペースを確保することです。
第2期治療は、永久歯が生え揃った後(12歳以降)に行います。この時期の治療目的は、永久歯の歯並びを細かく調整し、最終的な咬み合わせを完成させることです。
インビザラインファーストは、第1期治療に使用される矯正装置です。
治療開始の適切なタイミング
「子供の矯正治療はできるだけ早くから始めた方が良い」という考え方もありますが、必ずしもそうとは限りません。
当院では、お子さまの状態に応じて最適な治療開始時期を判断しています。早期からスタートせず、戦略的に待機するという選択肢もあります。
治療開始時期を判断する際には、歯並びの状態だけでなく、お子さまの性格や協力度、家庭環境なども考慮します。
長期間にわたる矯正治療は、お子さまにとってストレスになることもあります。また、治療が長引くと協力度が低下し、虫歯のリスクも高まる可能性があります。
まずは矯正専門医による診断を受け、お子さまに最適な治療開始時期を相談することをおすすめします。
インビザラインファーストの治療の流れ
インビザラインファーストによる治療は、以下のような流れで進みます:
- 初診・カウンセリング:お子さまの歯並びの状態を確認し、インビザライン ファーストが適しているかを判断します。
- 精密検査:口腔内検査、レントゲン撮影、顔や口の中の写真撮影、歯型採取などを行います。
- 治療計画の立案:デジタル技術を用いて、お子さまの歯の動きをシミュレーションし、治療計画を立てます。
- マウスピースの作製:治療計画に基づいて、お子さま専用のマウスピースを作製します。
- マウスピースの装着:作製されたマウスピースを装着し、使用方法や注意点について説明を受けます。
- 定期的な通院:1〜3ヶ月に1回程度の通院で、治療の進行状況を確認します。
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保定:治療完了後、歯が元の位置に戻らないよう、保定装置を装着します。
治療期間は個人差がありますが、一般的に第1期治療は6ヶ月〜1年程度かかります。
まとめ:お子さまに最適な矯正治療を選ぶために
インビザラインファーストは、お子さまの成長期に合わせた小児矯正の新たな選択肢として注目されています。透明で目立たず、取り外し可能で衛生的、痛みが少ないなど、お子さまと保護者の方にとって多くのメリットがあります。しかし、装着時間の管理や紛失のリスク、すべての症例に適応するわけではないといった注意点もあります。
お子さまの歯並びの状態や性格、生活習慣などを考慮し、最適な矯正治療を選択することが大切です。矯正治療は長期間にわたるものですので、お子さまが無理なく続けられる方法を選ぶことが成功の鍵となります。当院では、インビザラインファーストをはじめ、様々な小児矯正の選択肢をご用意しています。
お子さまの歯並びでお悩みの方は、まずは矯正無料相談にお越しください。専門の矯正医が、お子さまに最適な治療法をご提案いたします。お子さまの健やかな成長と美しい笑顔のために、私たちがサポートいたします。詳細はアーブル歯科クリニックの公式サイトをご覧ください。矯正無料相談も随時受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。
著者情報
- アーブル歯科クリニック 院長 田中 雄一
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略歴
- 2007年日本大学松戸歯学部卒業
- 2007年日本大学松戸歯学部附属病院 臨床研修医
- 2008年~2014年一般開業医勤務
- 2014年アーブル歯科クリニック開院
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所属団体
- 日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座 非常勤
- 日本口腔インプラント学会
- 日本顎咬合学会
- 日本臨床歯周病学会
- AICインプラント専門医
- BPSデンチャークリニカル 認定医
- スウェーデン歯科学会
- 口腔感染症予防外来認定医
- POIC研究会 ホームケアアドバイザー認定
- 私立アスクかなでのもり第二保育園 嘱託医
- ブレーメン津田沼保育園 嘱託医
- リトルガーデンインターナショナルスクール新習志野校 嘱託医
- クニナ奏の杜保育園 嘱託医
- 習志野市立谷津小学校 学校歯科医
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矯正医
- 田中 慶子
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所属団体
- 日本矯正歯科学会 認定医
- インビザライン 認定医