拡大床とは?小児矯正における役割と効果
お子さんの歯並びが気になり始めたら、早めの対応が大切です。特に5〜10歳の成長期は、将来の歯並びを左右する重要な時期なんです。
拡大床(かくだいしょう)は、永久歯がきれいに並ぶためのスペースを確保する目的で使用される矯正装置です。入れ歯に似たマウスピース型の装置で、顎の骨の成長を促しながら歯列を広げていきます。
拡大床は基本的に「取り外し可能」な装置です。食事や歯磨きの時には外せるので、お口の中を清潔に保ちやすいというメリットがあります。ただし、効果を得るためには1日10〜12時間以上の装着が必要になります。
では、拡大床はどのような仕組みで歯並びを改善するのでしょうか?
拡大床には「拡大ネジ」と呼ばれる部品が組み込まれています。このネジを定期的に回すことで、少しずつ装置が広がり、それに伴って歯列も拡大していくのです。顎の骨がまだ柔らかい成長期に行うことで、自然な形で歯列を広げることができます。

- 拡大床の適応年齢と治療期間
- プレオルソと拡大床の違いとは?
- 拡大床のメリットとデメリット
- プレオルソと拡大床、どちらを選ぶべき?
- 拡大床とプレオルソに関するよくある質問
- まとめ:お子さんに最適な矯正治療を選ぼう
拡大床の適応年齢と治療期間
拡大床の適応年齢
一般的に5〜13歳とされています。この時期は顎の骨の成長が活発で、永久歯がまだ完全に生え揃っていない混合歯列期です。特に小学校低学年(6〜8歳頃)から始めるのが最も効果的とされています。
お子さんの成長には個人差がありますので、最適な開始時期は歯科医師の診断によって決まります。早すぎると効果が限定的になり、遅すぎると顎の骨の成長が止まってしまい、拡大床の効果が得られなくなることもあるんです。
拡大床の治療期間
歯列の状態や始める年齢によって異なりますが、一般的には1年〜2年半程度かかります。拡大床で歯列が十分に広がり、永久歯が生えるスペースを確保できれば、治療期間は短くなる可能性があります。
拡大床は取り外し可能な装置ですが、効果を得るためには1日10〜12時間以上の装着が必要です。学校から帰ってきてから装着し、就寝中も使用するというスケジュールが一般的です。
装置の調整は月に1回程度の通院で行われます。定期的な調整を通じて、少しずつ歯列を広げていきます。
プレオルソと拡大床の違いとは?
プレオルソは5〜10歳の子どもを対象とした「歯列矯正用咬合誘導装置」です。シリコン素材でできた柔らかいマウスピース型の装置で、口周りの筋肉のバランスを整えることを主な目的としています。
一方、拡大床は顎の骨を物理的に広げ、永久歯が生えるスペースを確保するための装置です。プラスチック製の床部分にネジやワイヤーを組み込んだ構造になっています。
目的と効果の違い
プレオルソは「筋機能訓練」が主な目的です。装着することで口周りの筋肉のバランスを整え、口呼吸から鼻呼吸への改善や、顎の成長促進を間接的に促します。歯を直接動かすわけではないため、細かな歯の移動はできません。
対して拡大床は「歯列拡大」が主な目的です。装置のネジを定期的に回すことで、物理的に顎の幅を広げていきます。永久歯が生えるスペースを確保することで、将来的な歯並びの改善を目指します。
装着時間と使用方法の違い
プレオルソは日中1時間程度と就寝時の装着が基本です。学校に持っていく必要がなく、家にいるときと寝るときだけ使用するため、お子さんの負担が比較的少ないのが特徴です。
一方、拡大床は効果を得るために1日10〜12時間以上の装着が必要です。学校から帰ってきてから装着し、就寝中も使用するというスケジュールが一般的です。装着時間をしっかり守らないと効果が出にくいという特徴があります。
拡大床のメリットとデメリット
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拡大床による矯正治療には、いくつかのメリットとデメリットがあります。お子さんに最適な矯正方法を選ぶために、これらをしっかり理解しておきましょう。
拡大床のメリット
まず大きなメリットは、抜歯せずに歯並びを改善できる可能性が高まることです。顎を広げることで永久歯が並ぶスペースを確保できるため、将来的に抜歯矯正が必要になるリスクを減らせます。
また、取り外しが可能なため、食事や歯磨きの際に外すことができます。これにより口腔衛生を維持しやすく、虫歯のリスクを低減できるのも大きな利点です。
さらに、一般的な矯正治療に比べて痛みが少ないことも特徴です。顎に徐々に力を加えることで、お子さんの負担を最小限に抑えながら歯並びを整えることができます。
拡大床のデメリット
一方で、拡大床にはいくつかのデメリットも存在します。
まず、装着時間を守らないと効果が出ないという点です。1日10〜12時間以上の装着が必要で、お子さん自身の協力と親御さんの管理が重要になります。特に小さなお子さんの場合、継続して装着するのが難しいこともあります。
装着し始めの段階では違和感を感じることもあります。発音がしづらくなったり、唾液が増えたりすることがありますが、通常は1〜2週間程度で慣れてきます。
また、治療後に「後戻り」する可能性もあります。これは矯正治療全般に言えることですが、治療で動かした歯が元の位置に戻ろうとする現象です。後戻りを防ぐためには、保定装置の使用など、歯科医師の指示に従った管理が必要です。
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プレオルソと拡大床、どちらを選ぶべき?
お子さんの歯並びを改善するために、プレオルソと拡大床のどちらを選ぶべきか迷われている方も多いと思います。選択のポイントをいくつか紹介します。
歯列不正の程度による選択
歯列不正の程度が軽度であれば、プレオルソが適している場合があります。口周りの筋肉のバランスを整えることで、自然な歯並びへと導くことができるからです。
一方、歯列不正が中程度から重度の場合は、拡大床やその他の本格矯正が必要になることが多いです。特に永久歯のスペースが明らかに不足している場合は、物理的に顎を広げる拡大床の方が効果的でしょう。
お子さんの年齢と性格による選択
5〜8歳の低年齢のお子さんには、装着時間が短く、柔らかい素材でできたプレオルソが取り組みやすい場合があります。特に矯正装置の装着に抵抗がある子どもには、負担の少ないプレオルソから始めるのも一つの選択肢です。
一方、6歳以降の混合歯列期で、装置の管理がしっかりできるお子さんであれば、拡大床による治療も効果的です。特に前歯の重なりや顎の狭窄が見られる場合は、拡大床が適しているでしょう。
どちらの装置も、お子さん自身の協力と親御さんのサポートが重要です。装着時間を守れるかどうかも、選択の際の重要なポイントになります。

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拡大床とプレオルソに関するよくある質問
拡大床の装着で痛みはありますか?
拡大床は痛みの少ない矯正方法とされていますが、個人差があります。装置を拡大した時や、歯茎などに当たることで不快感を感じる場合がありますが、基本的には1〜2日で改善されることが多いです。
痛みが強い場合や長く続く場合は、無理せず歯科医師に相談しましょう。装置の調整が必要かもしれません。
拡大床は1つの装置で治療が完了しますか?
始める時期にもよりますが、基本的には成長期に使用するため、顎の成長や永久歯の萌出により、途中で作り変えが必要になることがあります。お子さんの成長に合わせて、適切な装置に変更していくことが大切です。
学校での装着は必要ですか?
自分で着脱が可能で管理ができる場合は、学校でも装着して使用時間を長くすることで効果が期待できます。ただし、管理が難しい場合は自宅での使用を主とすることもあります。お子さんの生活環境や管理状態によって個人差がありますので、歯科医師とよく相談しましょう。
プレオルソと拡大床を併用することはできますか?
基本的には、プレオルソと拡大床はそれぞれ異なる目的と効果を持つため、同時に使用することは一般的ではありません。お子さんの歯列の状態に合わせて、どちらか適した方を選択するのが通常です。
ただし、治療の段階によっては、最初にプレオルソで口腔周囲の筋肉のバランスを整えた後、拡大床による本格矯正に移行するというケースもあります。具体的な治療計画については、歯科医師とよく相談することをおすすめします。
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まとめ:お子さんに最適な矯正治療を選ぼう
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拡大床は5〜13歳の子どもを対象とした矯正装置で、顎の骨を広げて永久歯が生えるスペースを確保することを目的としています。一方、プレオルソは5〜10歳の子どもを対象としたマウスピース型装置で、口周りの筋肉のバランスを整えることを主な目的としています。
どちらの装置も、お子さんの成長期に合わせて使用することで、将来的な歯並びの改善が期待できます。選択の際は、歯列不正の程度、お子さんの年齢や性格、生活スタイルなどを考慮することが大切です。
最適な矯正方法を選ぶためには、専門医による適切な診断が不可欠です。お子さんの歯並びが気になる場合は、まずは矯正相談(無料)から始めてみてはいかがでしょうか。
アーブル歯科クリニックでは、お子さん一人ひとりに合った矯正治療プランをご提案しています。お気軽にアーブル歯科クリニックまでご相談ください。

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著者情報
- アーブル歯科クリニック 院長 田中 雄一
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略歴
- 2007年日本大学松戸歯学部卒業
- 2007年日本大学松戸歯学部附属病院 臨床研修医
- 2008年~2014年一般開業医勤務
- 2014年アーブル歯科クリニック開院
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所属団体
- 日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座 非常勤
- 日本口腔インプラント学会
- 日本顎咬合学会
- 日本臨床歯周病学会
- AICインプラント専門医
- BPSデンチャークリニカル 認定医
- スウェーデン歯科学会
- 口腔感染症予防外来認定医
- POIC研究会 ホームケアアドバイザー認定
- 私立アスクかなでのもり第二保育園 嘱託医
- ブレーメン津田沼保育園 嘱託医
- リトルガーデンインターナショナルスクール新習志野校 嘱託医
- クニナ奏の杜保育園 嘱託医
- 習志野市立谷津小学校 学校歯科医
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矯正医
- 田中 慶子
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所属団体
- 日本矯正歯科学会 認定医
- インビザライン 認定医


























