拡大床矯正とは?歯を抜かない小児矯正の仕組み
子どもの歯並びが気になるけれど、歯を抜く矯正は避けたい・・・。そんなお悩みをお持ちの保護者の方は少なくありません。
拡大床矯正は、お子さんの顎の成長を促進させながら、永久歯が生えるためのスペースを確保する矯正方法です。その名の通り「床」と呼ばれる装置を使って歯列を「拡大」していきます。
拡大床は、レジン(プラスチック)で作られた床の部分に、拡大ネジやワイヤーが組み込まれた装置です。この装置を装着し、定期的にネジを回すことで少しずつ歯列を広げていきます。
一般的な矯正装置と違って取り外しができるため、食事や歯磨きの際には外すことができるんです。これは子どもにとって大きなメリットといえるでしょう。

- 拡大床矯正のメリット〜歯を抜かない治療の利点
- 拡大床矯正の適応年齢と効果的な時期
- 拡大床矯正の限界とデメリット
- 拡大床と他の矯正方法との比較
- 拡大床矯正のリスクと注意点
- まとめ:お子さんに最適な矯正治療を選ぶために
拡大床の適応年齢と治療期間
拡大床による矯正治療には、いくつかの大きなメリットがあります。特に小さなお子さんの矯正において重要な点をご紹介します。
永久歯を抜かずに矯正できる
拡大床の最大の特徴は、永久歯を抜かずに矯正治療ができることです。顎の成長期にある子どもの場合、拡大床を使って顎の成長を促進し、永久歯が並ぶスペースを確保することができます。
一度抜いた永久歯は二度と生えてきません。将来的な歯の健康を考えると、可能な限り歯を残す治療法は大きなメリットといえるでしょう。
取り外しができて衛生的
拡大床は患者さん自身で取り外しができる装置です。食事の時には外せるので、食べ物が装置に挟まる心配がありません。また、歯磨きも通常通りできるため、虫歯のリスクを低減できます。
学校に持っていく必要もなく、家にいるときと寝るときだけ使用するタイプもあります。お子さんの生活スタイルに合わせて使用できるのは大きな利点です。
1日の装着時間は12〜14時間程度が目安とされていますが、これは寝ている時間を含めれば十分に確保できる時間です。
費用が比較的安価
拡大床矯正は、一般的なワイヤー矯正などと比べて費用が抑えられる傾向にあります。特に早期に治療を開始して、1〜2個の装置で歯並びが改善した場合は、約10万円程度で治療が終了することもあります。
アーブル歯科クリニックでは、小児本格矯正の費用が33万円〜49.5万円(税込)となっております。
マウスピース型の歯列矯正用咬合誘導装置(プレオルソ)は初回年間契約が38,500円(税込)、次年度の再契約は33,000円(税込)と、比較的リーズナブルな価格設定となっておりますのでお子様のお口の状況に合わせた最適な治療のご案内が可能です。
拡大床矯正の適応年齢と効果的な時期
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拡大床による矯正治療は、顎の成長を促進させる効果があるため、顎の成長期にある子どもに適しています。具体的には5〜10歳頃までが最も効果的な時期とされています。
特に6〜7歳頃に治療を開始すると、必要となる床装置の個数が少なくて済むため、治療費も抑えられる傾向にあります。
顎の成長期を過ぎると、拡大床の効果は徐々に低下していきます。小学校高学年になると生え変わりが進み、床矯正装置を維持する乳歯が少なくなることで装置の適合性が悪くなり、拡大効果が少なくなっていくのです。
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早期治療のメリット
早期に矯正治療を始めることには、いくつかの大きなメリットがあります。まず、顎の成長期間が長いため、拡大床の効果が発揮しやすくなります。また、歯列不正が軽度なうちに対処することで、将来的に複雑な矯正治療が必要になるリスクを減らせる可能性があります。
さらに、早期に適切な咬み合わせを獲得することで、口呼吸から鼻呼吸への改善や、口腔周囲の筋肉のバランス改善といった効果も期待できます。
歯並びに不安を感じたら、まずは歯科医院での相談をおすすめします。
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拡大床矯正の限界とデメリット
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拡大床矯正にはメリットがある一方で、いくつかの限界やデメリットも存在します。治療を検討する際には、これらの点もしっかり理解しておくことが大切です。
すべての歯並びに適応するわけではない
拡大床は軽度の歯列不正には効果的ですが、重度の歯列不正には適していません。歯列不正が強い場合は、拡大床では治らず、本格矯正治療が必要になることがあります。
また、拡大床ではあごの骨を拡げることはできず、歯を外側に傾斜させることでスペースを確保する装置です。そのため、骨格的な問題がある場合には効果が限定的です。
装着時間の確保が必要
拡大床は取り外しができる装置ですが、効果を得るためには1日12〜14時間の装着が必要です。お子さんが指示通りに装置を使用しないと、期待した効果が得られないことがあります。
また、装置を紛失したり破損したりするリスクもあります。お子さんの性格や生活習慣によっては、固定式の装置の方が適している場合もあるでしょう。
治療後の後戻りのリスク
拡大床による治療後、使用を中止してしまうと後戻りしてしまうリスクがあります。歯並びは時間とともにだんだんと狭くなっていく傾向があるため、広げた歯列を維持するためには、保定期間が必要です。
治療後も歯科医師の指示に従い、必要に応じて保定装置を使用することが重要です。
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拡大床と他の矯正方法との比較
お子さんの歯並びを改善するための矯正方法はいくつかあります。それぞれの特徴を比較して、お子さんに最適な方法を選びましょう。
プレオルソとの違い
アーブル歯科クリニックでは、5〜10歳の子供を対象とした「歯列矯正用咬合誘導装置(プレオルソ)」によるマウスピース型矯正治療を提供しています。
プレオルソは、シリコン素材の柔らかいマウスピース式で、拡大床と同様に取り外しが可能です。口周りの筋肉のバランスを整えることで顎の成長を促進し、将来の永久歯の萌出スペースを確保する点は拡大床と似ています。
しかし、プレオルソは既製品のため拡大床よりも費用が安価である一方、細かな歯の移動はできないという限界があります。
本格矯正との違い
本格矯正(ワイヤー矯正やマウスピース矯正)は、歯を直接動かして歯並びを改善する方法です。細かい歯の調整も可能で、より理想的な歯並びを目指せます。
アーブル歯科では、8歳頃から始める小児本格矯正として、3種類の矯正方法(カスタムメイド型マウスピース矯正「インビザライン」、拡大床、クワドヘリックス+ワイヤー矯正)を提供しています。
本格矯正は拡大床よりも費用が高くなりますが、出っ歯、受け口、交差咬合、鋏状咬合、過蓋咬合、開咬、叢生(八重歯・乱杭歯)、空隙歯列(すきっ歯)などのさまざまな歯列不正に対応できるメリットがあります。
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拡大床 説明動画
プレオルソ 説明動画
インビザラインファースト 説明動画

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プレオルソ矯正 拡大床(かくだいしょう) 小児本格矯正 適応年齢 5〜10歳頃のわずかな歯列不正に適応。簡易で始めやすい治療法。 6〜11歳頃の混合歯列期に適応。永久歯が生える前の「顎の幅不足」や「歯の重なり」に対応。 7〜12歳頃の中等度〜重度の歯列不正に適応。しっかり治す矯正法。 目的・特徴 「機能矯正」と呼ばれ、口腔周囲の筋肉のバランスを整えて顎の成長を正す。細かい歯の移動は行わない。 「顎の幅を広げる」ことを目的とした装置で、歯列弓を拡大し永久歯が並ぶスペースを確保する。主に上顎に使用。 歯を直接動かし、正確な歯並びを作る。永久歯が正しい位置に生えるスペースを確保する。 装置の種類・使用方法 シリコン製のマウスピースタイプ。
日中1時間以上+就寝時に使用。取り外し式のアクリル製装置。中央にスクリューがあり、週1〜2回ネジを回して少しずつ拡大する。
日中も装着推奨(食事・歯磨き時のみ取り外し)。固定式装置やワイヤー矯正、小児用インビザラインなど。
装着方法や管理は医院により異なる。治療効果 歯列アーチを広げ、顎の正しい成長を促す。
歯列の状態により効果に個人差あり。歯列の幅を広げ、叢生(重なり)や交叉咬合を予防。
将来的な本格矯正を簡略化できる場合もある。前歯から奥歯まで1本単位で整え、理想的な歯並びへ。
長期的に安定した結果が得られる。治療期間の目安 約1〜2年。成長期に合わせて使用継続。 約1〜1年半。拡大後は保定装置を使用して安定化を図る。 約2〜3年。永久歯列が完成するまで管理。 
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拡大床矯正のリスクと注意点
拡大床矯正を検討する際には、いくつかのリスクや注意点も理解しておく必要があります。
不適切な拡大によるトラブル
拡大床による治療は、適切な診断と治療計画に基づいて行われることが重要です。不適切な拡大を行うと、歯並びが改善しないばかりか、かえって症状が悪化したり、装置を外したら元に戻ったりするトラブルが生じる可能性があります。
日本臨床矯正歯科医会のアンケートによると、回答者の約8割が「不適切な拡大をされた患者さんを診察した経験を持つ」と回答しており、その大半は「拡大床によるもの」だったとのことです。
歯肉退縮のリスク
中学生以降も長期にわたって拡大床を使用し続けると、歯肉退縮(歯茎が下がる)を起こすリスクがあります。拡大床は適応年齢と適応症があり、すべての子どもの歯並びの問題に対して万能ではないことを理解しておきましょう。
信頼できる矯正歯科医の選択
矯正治療を行う歯科医師の選択も重要です。矯正歯科治療は患者さん一人一人に合わせたオーダーメイドの治療であり、適切な治療を行うためには、矯正歯科治療についての専門教育と研修、経験が不可欠です。
日本矯正歯科学会の認定医の資格を持つ矯正歯科医を選ぶことで、より安心して治療を受けることができるでしょう。
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まとめ:お子さんに最適な矯正治療を選ぶために
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拡大床による矯正治療は、顎の成長期にある5〜10歳頃のお子さんの軽度の歯列不正に効果的な治療法です。永久歯を抜かずに矯正できる、取り外しができて衛生的、費用が比較的安価といったメリットがあります。
一方で、すべての歯並びに適応するわけではない、装着時間の確保が必要、治療後の後戻りのリスクといった限界やデメリットも存在します。
お子さんの歯並びが気になる場合は、まずは矯正相談を受けてみることをおすすめします。アーブル歯科クリニックでは、矯正相談(無料)から始め、お子さんの状態に合わせた最適な治療法をご提案しています。
早期に適切な治療を行うことで、将来的な歯並びの問題を予防し、お子さんの健やかな成長をサポートしましょう。
詳しい情報や無料矯正相談のご予約は、アーブル歯科クリニックまでお気軽にお問い合わせください。

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著者情報
- アーブル歯科クリニック 院長 田中 雄一
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略歴
- 2007年日本大学松戸歯学部卒業
- 2007年日本大学松戸歯学部附属病院 臨床研修医
- 2008年~2014年一般開業医勤務
- 2014年アーブル歯科クリニック開院
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所属団体
- 日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座 非常勤
- 日本口腔インプラント学会
- 日本顎咬合学会
- 日本臨床歯周病学会
- AICインプラント専門医
- BPSデンチャークリニカル 認定医
- スウェーデン歯科学会
- 口腔感染症予防外来認定医
- POIC研究会 ホームケアアドバイザー認定
- 私立アスクかなでのもり第二保育園 嘱託医
- ブレーメン津田沼保育園 嘱託医
- リトルガーデンインターナショナルスクール新習志野校 嘱託医
- クニナ奏の杜保育園 嘱託医
- 習志野市立谷津小学校 学校歯科医
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矯正医
- 田中 慶子
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所属団体
- 日本矯正歯科学会 認定医
- インビザライン 認定医





























