拡大床矯正とは?基本的な仕組みと特徴
お子さまの歯並びが気になり始めたとき、どの矯正方法を選ぶべきか迷われる方は多いでしょう。特に「拡大床」という言葉を耳にしたことはありませんか?
拡大床は、主に子どもの矯正治療で使用される装置で、顎の幅を広げて歯並びを改善するために用いられます。歯列が狭くなっている場合に効果的で、将来の永久歯が生えるスペースを確保する役割を果たします。
拡大床の最大の特徴は、取り外しが可能な点です。お子さまが自分で装着・取り外しができるため、食事や歯磨きの際に外すことができます。これにより、虫歯のリスクを低減できるというメリットがあります。
拡大床は中央にスクリューが付いており、定期的にネジを回すことで少しずつ力を加え、顎の骨や歯列を広げていきます。この作用によって歯並びのスペース不足を解消し、将来的な歯列不正を防ぐことができるのです。
当院では、8歳頃から始める小児本格矯正として、拡大床を含む3種類の矯正方法をご提供しています。拡大床は特に混合歯列期(乳歯から永久歯への生え変わり時期)のお子さまに適した治療法といえるでしょう。

- 拡大床と他の矯正法の主な違い
- 拡大床矯正のメリット・デメリット
- 拡大床と他の矯正法の費用比較
- 拡大床矯正に適した年齢と治療期間
- 拡大床矯正の実際の治療ステップ
- 拡大床矯正で改善できる歯列不正の種類
- 拡大床矯正を選ぶ際のポイント
- まとめ:お子さまに最適な矯正法を選ぶために
拡大床と他の矯正法の主な違い
お子さまの歯並びを改善するための矯正方法は複数あります。それぞれの特徴を理解することで、お子さまに最適な選択ができるでしょう。ここでは、拡大床と他の矯正法の違いについて詳しく解説します。
プレオルソとの違い
プレオルソは5〜10歳の子供を対象としたマウスピース型矯正装置です。口腔周囲の筋肉のバランスを整えて顎の成長を促進させる点では拡大床と似ていますが、アプローチ方法が異なります。
プレオルソはシリコン素材の柔らかいマウスピースで、主に家にいる時と寝る時に使用します。一方、拡大床はプラスチックと金属で作られており、学校から帰ってきたら10〜12時間以上の装着が推奨されています。
効果の面では、プレオルソは軽度の歯列不正に適していますが、拡大床はより強い歯列不正にも対応できます。費用面では、プレオルソの初回年間契約が38,500円(税込)なのに対し、拡大床は330,000円〜(税込)と差があります。
インビザラインとの違い
インビザラインは透明なマウスピース型矯正装置で、見た目が目立たないという大きなメリットがあります。拡大床と比較すると、インビザラインは装着時間が16〜22時間と長く、学校でも使用する必要があります。
また、インビザラインは3Dスキャンによって製作される完全オーダーメイドの装置で、細かな歯の動きを設定できるため、痛みが少ないという特徴があります。費用は440,000円〜(税込)と拡大床よりやや高めです。
固定式装置(クワドヘリックス)との違い
クワドヘリックスは固定式の矯正装置で、拡大床と同様に歯列を広げる効果がありますが、取り外しができない点が大きく異なります。24時間装着されているため、矯正効果が持続的に得られるというメリットがあります。
一方で、食事や歯磨きの際に取り外せないため、口腔衛生の管理が難しくなるというデメリットもあります。費用は拡大床と同等の330,000円〜(税込)となっています。
拡大床 説明動画
プレオルソ 説明動画
インビザラインファースト 説明動画

| プレオルソ矯正 | 拡大床(かくだいしょう) | 小児本格矯正 | |
|---|---|---|---|
| 適応年齢 | 5〜10歳頃のわずかな歯列不正に適応。簡易で始めやすい治療法。 | 6〜11歳頃の混合歯列期に適応。永久歯が生える前の「顎の幅不足」や「歯の重なり」に対応。 | 7〜12歳頃の中等度〜重度の歯列不正に適応。しっかり治す矯正法。 |
| 目的・特徴 | 「機能矯正」と呼ばれ、口腔周囲の筋肉のバランスを整えて顎の成長を正す。細かい歯の移動は行わない。 | 「顎の幅を広げる」ことを目的とした装置で、歯列弓を拡大し永久歯が並ぶスペースを確保する。主に上顎に使用。 | 歯を直接動かし、正確な歯並びを作る。永久歯が正しい位置に生えるスペースを確保する。 |
| 装置の種類・使用方法 | シリコン製のマウスピースタイプ。 日中1時間以上+就寝時に使用。 |
取り外し式のアクリル製装置。中央にスクリューがあり、週1〜2回ネジを回して少しずつ拡大する。 日中も装着推奨(食事・歯磨き時のみ取り外し)。 |
固定式装置やワイヤー矯正、小児用インビザラインなど。 装着方法や管理は医院により異なる。 |
| 治療効果 | 歯列アーチを広げ、顎の正しい成長を促す。 歯列の状態により効果に個人差あり。 |
歯列の幅を広げ、叢生(重なり)や交叉咬合を予防。 将来的な本格矯正を簡略化できる場合もある。 |
前歯から奥歯まで1本単位で整え、理想的な歯並びへ。 長期的に安定した結果が得られる。 |
| 治療期間の目安 | 約1〜2年。成長期に合わせて使用継続。 | 約1〜1年半。拡大後は保定装置を使用して安定化を図る。 | 約2〜3年。永久歯列が完成するまで管理。 |
拡大床矯正のメリット・デメリット
-
拡大床矯正を検討する際には、そのメリットとデメリットをしっかりと理解しておくことが大切です。お子さまの状況や生活スタイルに合わせて、最適な選択ができるようにしましょう。


-
拡大床のメリット
拡大床の最大のメリットは、取り外しが可能なことです。食事の際に外せるため、食べ物が装置に挟まる心配がなく、虫歯のリスクを低減できます。また、歯磨きもしやすいため、口腔衛生を保ちやすいという利点があります。
さらに、拡大床は顎の成長を促進させる効果があり、将来の永久歯の萌出スペースを確保することができます。これにより、将来的な歯並びの悪化を防ぎ、抜歯矯正にならないようにするメリットもあります。
また、固定式装置と比較して痛みが少なく、お子さまの負担が軽減されるという点も大きなメリットです。
拡大床のデメリット
一方で、拡大床にはいくつかのデメリットも存在します。まず、装着時間の確保が必要であり、効果を得るためには1日10〜12時間以上の装着が推奨されています。お子さまが自己管理できない場合、効果が十分に得られないことがあります。
また、拡大床は装置自体がやや大きく、初めのうちは違和感や発音のしづらさを感じることがあります。慣れるまでに1〜2週間程度かかることが一般的です。
さらに、拡大床は歯列全体を広げる効果はありますが、個々の歯の細かな移動には限界があります。そのため、歯列不正の状態によっては、後に追加の矯正治療が必要になるケースもあります。
-
拡大床と他の矯正法の費用比較
| 治療内容 | 費用 | 特徴・補足 |
|---|---|---|
| 拡大床 | ¥330,000〜 | 矯正装置代を含む。作り直し無料。 別途調整費用が必要。 治療期間:1〜2年半、月1回通院。 |
| プレオルソ | 初回:¥38,500/年 再契約:¥33,000/年 |
約2ヶ月に1回通院。 調整費用:¥0〜¥300。 軽度の歯列不正に適する。 |
| インビザライン | ¥440,000〜 | アイテロ5Dによるスキャニング対応。 型取りが苦手なお子様も安心。 マウスピース紛失時の再作成無料。 |
| クワドヘリックス | ¥330,000〜 | 固定式装置で24時間矯正効果。 拡大床と同等の費用。 取り外し不可のため性格・生活習慣に応じて選択。 |
-
拡大床矯正に適した年齢と治療期間
拡大床矯正は、お子さまの成長段階に合わせて開始することが重要です。最適な時期に治療を始めることで、効果的に歯並びを改善することができます。
最適な治療開始年齢
拡大床矯正は主に混合歯列期(乳歯から永久歯への生え変わり時期)に行われます。具体的には、8歳頃から始めるのが一般的です。この時期は顎の骨がまだ成長途中であり、拡大床による矯正効果が得られやすいためです。
早期に治療を開始することで、顎の成長をうまく利用し、永久歯がきれいに生えそろうよう導くことができます。また、将来的な歯列不正を防ぐことも可能です。
治療期間と通院頻度
拡大床矯正の治療期間は、歯列の状態や始める年齢によって異なりますが、一般的に1年〜2年半となります。その後、永久歯が生え揃うまで経過観察を行います。
通院頻度は月に1回程度で、拡大床の調整や歯列の状態確認を行います。お子さまの成長に合わせて、適切な調整を行っていくことが重要です。

拡大床矯正の実際の治療ステップ
拡大床矯正を始める際には、どのような流れで治療が進むのか知っておくことで、お子さまも安心して治療に臨むことができます。ここでは、拡大床矯正の治療ステップについて詳しく解説します。
矯正相談と診断
まずは無料の矯正相談から始めます。現在の症状やお悩みをお聞きし、お口の簡単なチェックと当院で行っている矯正治療についての説明を行います。
次に、矯正診断(精密検査:33,000円(税込))を行います。レントゲン撮影や写真撮影、噛み合わせチェック、模型を作るための歯型取りなどを行い、詳細な診断と治療計画を作成します。
治療計画と装置の作製
診断結果をもとに、お子さまに最適な治療計画を立てます。拡大床を選択した場合、歯型をもとに個々の口腔に合わせた拡大床を作製します。
拡大床は、プラスチックの部分を好きな色に変えることができるため、お子さまが楽しく治療に取り組める工夫も可能です。
装着と調整
拡大床が完成したら装着し、使用方法や注意点について詳しく説明します。拡大床は学校から帰ってきてから10〜12時間(就寝中も含む)の装着が推奨されます。
その後、月に1回程度の通院で拡大床の調整を行います。ネジを回して少しずつ拡大していくことで、顎の幅を広げていきます。
経過観察と次のステップ
拡大床による治療が終了した後も、永久歯が生え揃うまで定期的な経過観察を行います。必要に応じて、第二期治療(ブラケットとワイヤーによる歯の移動)へと進むこともあります。
-
拡大床矯正で改善できる歯列不正の種類
-
拡大床矯正は様々な歯列不正に対応できますが、特に効果的な症例があります。ご自身のお子さまの歯列不正がどのタイプに当てはまるのか、確認してみましょう。
叢生(八重歯・乱杭歯)
叢生(そうせい)とは、歯が重なり合って生えている状態を指します。顎のスペースが足りないために起こることが多く、拡大床で顎を広げることで改善が期待できます。
特に前歯部の叢生は見た目にも気になりやすく、早期の対応が望ましいでしょう。拡大床で顎のスペースを確保することで、将来的な叢生の悪化を防ぐことができます。
交叉咬合・下顎側方偏位
交叉咬合(こうさこうごう)は、上下の歯がクロスして噛み合っている状態です。また、下顎側方偏位は、下顎が左右どちらかに偏っている状態を指します。
これらの症状は、顎の成長に悪影響を及ぼす可能性があるため、早期の治療が推奨されます。拡大床は上顎を広げることで、これらの症状の改善に効果的です。
その他の歯列不正
拡大床は、上記以外にも以下のような歯列不正の治療に効果があります:
- 出っ歯(上顎前突)
- 受け口(下顎前突)
- 過蓋咬合(噛み合わせが深い)
- 開咬(前歯が閉じない)
- 空隙歯列(すきっ歯)
ただし、歯列不正の程度によっては、拡大床だけでなく、他の矯正装置と併用したり、後に本格的な矯正治療が必要になるケースもあります。

拡大床矯正を選ぶ際のポイント
-
-
お子さまに最適な矯正方法を選ぶ際には、いくつかのポイントを考慮することが大切です。拡大床矯正が本当に適しているのか、以下のポイントを参考に検討してみましょう。
お子さまの年齢と歯列の状態
拡大床矯正は8歳頃から始めるのが一般的です。この時期は混合歯列期(乳歯から永久歯への生え変わり時期)であり、顎の成長を利用した治療が効果的です。
また、歯列不正の程度も重要なポイントです。軽度から中等度の歯列不正であれば拡大床で対応可能ですが、重度の場合は他の矯正方法を検討する必要があるかもしれません。
お子さまの生活スタイルと性格
拡大床は取り外し可能な装置であるため、お子さまの自己管理能力が重要になります。装着時間を守れるか、装置を大切に扱えるかなど、お子さまの性格や生活スタイルに合わせた選択が必要です。
例えば、スポーツや楽器演奏など特定の活動をしているお子さまの場合、取り外しができる拡大床は便利かもしれません。一方で、装着忘れが心配な場合は、固定式装置の方が適している可能性もあります。
費用と治療期間のバランス
矯正治療は長期間にわたるため、費用と治療期間のバランスも重要な検討ポイントです。拡大床は330,000円〜(税込)と初期費用はかかりますが、将来的な本格矯正の必要性を減らせる可能性があります。
また、プレオルソなど他の矯正方法と比較して検討することも大切です。軽度の歯列不正であれば、まずはプレオルソから始めて、効果が不十分な場合に拡大床に移行するという選択肢もあります。
まとめ:お子さまに最適な矯正法を選ぶために
-
拡大床矯正は、お子さまの成長期に顎の幅を広げ、将来の永久歯のスペースを確保する効果的な治療法です。取り外しが可能で食事や歯磨きがしやすいというメリットがある一方、装着時間の確保が必要というデメリットもあります。
費用面では、拡大床は330,000円〜(税込)と初期費用はかかりますが、将来的な歯列不正の悪化を防ぐことができます。プレオルソ(38,500円〜)、インビザライン(440,000円〜)、クワドヘリックス(330,000円〜)など、他の矯正方法と比較検討することも重要です。
お子さまに最適な矯正法を選ぶためには、年齢や歯列の状態、生活スタイル、性格などを総合的に考慮することが大切です。まずは無料の矯正相談から始めて、専門医の診断を受けることをおすすめします。
当院では、お子さまの状態に合わせた最適な矯正プランをご提案しています。お子さまの健やかな成長と美しい歯並びのために、ぜひお気軽にご相談ください。
詳しい情報や無料相談のご予約は、アーブル歯科クリニックのページをご覧ください。
-

-
著者情報
-
- アーブル歯科クリニック 院長 田中 雄一
-
略歴
- 2007年日本大学松戸歯学部卒業
- 2007年日本大学松戸歯学部附属病院 臨床研修医
- 2008年~2014年一般開業医勤務
- 2014年アーブル歯科クリニック開院
-
所属団体
- 日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座 非常勤
- 日本口腔インプラント学会
- 日本顎咬合学会
- 日本臨床歯周病学会
- AICインプラント専門医
- BPSデンチャークリニカル 認定医
- スウェーデン歯科学会
- 口腔感染症予防外来認定医
- POIC研究会 ホームケアアドバイザー認定
- 私立アスクかなでのもり第二保育園 嘱託医
- ブレーメン津田沼保育園 嘱託医
- リトルガーデンインターナショナルスクール新習志野校 嘱託医
- クニナ奏の杜保育園 嘱託医
- 習志野市立谷津小学校 学校歯科医
-
矯正医
- 田中 慶子
-
所属団体
- 日本矯正歯科学会 認定医
- インビザライン 認定医

-
-


























